最初に、年金暮らしをしている人の家計の実態について触れておきます。総務省統計局の家計調査(2010年)によると、
60歳以上の無職世帯(総世帯)の平均収入は月あたり約18万4千円。そのうちの9割が年金で占められています。
いっぽう、支出は月あたり平均23万円。つまり約4万6千円が毎月の赤字であり、この分は預貯金などの取り崩しで
賄われている計算になります。
さらに、ゆとりある老後生活を送るための費用は「最低日常生活費」である23万円にゆとりのための上乗せとして、
旅行やレジャー、趣味や教養、身内との付き合いなどの費用が付加され、月額で平均14万3千円が必要と考えられています。
よってゆとりある老後の生活費としては月額平均で約37万円が必要です。
また、預貯金の平均額は、65歳以上の世帯主がいる二人以上の世帯で約2,300万円(同調査)。
しかし、この平均を下回る世帯はおよそ三分の二だといわれています。この実態を見れば定年後に限られた資金で
どう生活していくのか、働いていたころとは違う生活設計を考えなければならないことがわかるでしょう。
まずは、現在のわが家の家計を把握することと、生活をどのようにダウンサイジングしていくかを考えましょう。
そのとき、老後の大切な三大要素である「お金」と「生きがい」と「健康」という三つの要素のバランスを取りながら
生活設計を考えます。
定年後の生活をシミュレーションするうえで、最初にやることは家計簿をつけて、現状を把握することです。
まずは1ヶ月を目標にしましょう。家計簿は、大学ノートやパソコンの表計算ソフトなど簡単なものでいいです。
項目は、まず大きく毎月の収入と毎月の支出、預貯金の項目を設定します。年金生活では今ある預貯金を徐々に
取り崩していくことになるので、残高を把握しやすくするために、あえて預貯金の項目を立てます。
①収入の項目は、年金、再就職やアルバイトの収入でしょうか。
アパートなどの投資用不動産の賃料や株式の配当などもあれば加えておきます。
②支出の項目は、食費、衣服費、水道光熱費などの生活費、健康保険料、生命保険料、医療費、教養娯楽費、
税金、住宅などの各種ローンの支払いなどとします。
もし、自分なりの支出があれば、その項目も追加します。
③預貯金の項目は退職金も含めて、使い道をいくつかに分けてみます。
高額な医療費や介護費、子どもの結婚出産のお祝いや新居の費用、そのほか不意の出費に備える費用、自宅のリフォーム
やマンションの大規模修繕費などの住宅費用、さらに自分と配偶者の葬儀費用、そして余暇を楽しむゆとりの資金や
生活費の予備資金です。
最初から厳密にやる必要はありません。1ヶ月分をまとめるだけでも今後の傾向がつかめます。目安として、1ヶ月分の支出
を12倍し、さらに平均余命の年数を掛ければ、今後必要なおおまかな支出が割り出せます。
どれだけ余裕資金があるのか、または足りないのかが見えてきます。
支払いを減らすだけでなく、仕事を見つけるなどして少しでもいいから収入を得る方法を考えてもよいでしょう。
たとえ月2万円でも、年間にすれば24万円になります。
今後は加齢に伴い、生活費や教養娯楽費は減っていくだろうし、保険料やローンの支払いもなくなったり、
負担が軽減できる部分もあるはずです。
その代わり、医療費(高齢になると自己負担分が減るとはいえ、通院のための交通費などもかかる)や介護費、
リフォーム費用などの負担が大きくなる可能性があります。
足りないからといって急激に生活のダウンサイジングをするのはよくありません。健康を害するかもしれないし、
なにより精神的につらいでしょう。毎日の食事は健康食で質素に、たまにはレストランで贅沢をするといった、
メリハリをつけながら生活の縮小を図ることです。
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