昨今、過剰な延命措置に疑問を感じ、より自然により安らかに旅立ちたいと望んでいる人が増えているようです。
その背景を踏まえ、日本尊厳死協会では、人権確率の運動として「尊厳死の宣言書(リビングウィル)」の
普及を目指しています。
この宣言書は、もはや治癒が望めない傷病で死期が迫ったときに、医師に提示して、
人間らしく安らかに自然な死を遂げること(尊厳死)を求めるための書面です。
その主な内容は次のとおりです。
◆医学的に不治の状態で死期が間近な場合、いたずらに死期を延ばすだけの延命措置を拒否する。
◆苦痛を和らげる措置を最大限実施してもらいたい。その副作用で死期が早まっても構わない。
◆数ヶ月間にわたり、いわゆる植物状態に陥った場合は一切の生命維持装置を外してもらいたい。
さらに、この宣言書にしたがって行われたすべての責任は、自分自身にあることが附記されています。
一般的に、尊厳死と認められている「不治かつ末期」の状態とは、回復の見込みがなく死期が迫り、
人工呼吸器などの生命維持装置をつけても死期を先延ばしするだけという場合と解釈されています。
例えば「脳死状態」で、生命維持装置をつければある程度は死期を延ばせるというときです。
しかし「植物状態」は脳の一部が機能しているため脳死状態ではないので、自力呼吸が可能になる場合もあり、
これを尊厳死の対象と認めるかは意見が分かれています。
「尊厳死の宣言書(リビングウィル)」では数ヶ月にわたり、いわゆる植物状態に陥ったときは
一切の生命維持装置を外してほしいという内容も含まれています。
(公証役場で作る宣言書では通常、植物状態は尊厳死に含みません)
尊厳死宣言書は、あくまで私書であり法律上の規定はありませんが、生命に関わるテーマなので、
残される者や医療関係者に責任がおよばないように配慮するなど、慎重に作成する必要があります。
公証役場を利用する場合、作り方は二通りあります。
①自分で書いた宣言書を公証役場で署名捺印し、公証人の認証を受ける。
いわゆる私署証書で認証を受ける方法です。
公証人が内容について確認することはないため、不安があれば通常の公正証書にしたほうがよいでしょう。
②公正証書で作成する。
自分で内容を決め、公証人に文案を作ってもらいます。
(公証役場に見本があるので参考にするとよいでしょう)。
その文案を確認・訂正し、後日、公証役場で公正証書を作成します。
その際、なるべく家族も同席することが望ましいです。
せっかく尊厳死宣言書を作っても、いざというときに医療関係者に提示できなければ意味がありません。
来るべきときに、家族などに事前に渡して頼んでおく必要があります。
(入院時などに意識があれば自分で渡してもよい)。
提示するタイミングは延命治療の開始前です。
生命維持装置の装着後だと、開始した処置を停止し死に至らしめることになるので、
医者などが責任を問われかねないと躊躇する可能性が高いからです。
宣言書の作成後、やはり延命措置を受けたいと思ったら、いつでも文書あるいは口頭で撤回の意思表示ができます。
次回は生前三点契約書は公正証書で作成することについて説明します。
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