今回は、財産管理等の委任契約書について詳しく説明します。
高齢になって出歩くことが難しくなると、日常何気なくやってきたこと、例えば金融機関での振込やお金の出し入れが不便になったりします。
現在、どの金融機関も本人確認が厳しくなってきています。
委任状を持って行けば代理人でも対応してくれるものの、一つの手続きのたびに委任状が必要になり大変わずらわしく感じます。
他にも生命保険の契約や病院・介護施設の入退所の手続き、要介護認定の申請や費用の支払いなど、
本人または代理人であることを証明できる書類が必要な手続きはたくさんあります。
そのような場合に備えて、前もって作っておくと便利なのが「財産管理等の委任契約書」です。
この契約書は民法の規定に基づいた任意代理契約であり、当事者同士の合意した契約のみで成立します。
内容も比較的自由に決められるので、日常の事務手続きについて幅広く使えます。
手続きのたびに委任状を作成するというわずらわしさから解放されるほかに、世話をしてくれる人(受任者)が
気兼ねなくできるというメリットも見逃せません。「世話をしてあげたい」という純粋な気持ちがあっても、お金が絡んでくる以上、
周囲の目がどうしても気になるという人が多いのです。しかし、この契約書を用意しておけば、
あなたの指示を受けていることを周囲に証明できるので、世話をする人はずっとやりやすくなります。
たとえあなた自身は気にしていなくても、これは世話をしてくれる人への気遣いとも言えます。
とはいえ、財産管理を他人に任せるのですから注意も必要です。あとで嫌な思いをしないためにも次の5つの事柄は心得ておきましょう。
①受任者には依頼したことだけを遂行してもらう。
②通帳や印鑑は、必要なときだけその都度渡し、用が済んだら返却してもらう。
③依頼した用事が済んだら、必ず報告を受け、それを記録しておく。
④6ヶ月に1回くらい、書面で報告を受けるようにする。
⑤可能なら、第三者にチェックしてもらうこともできるように契約で義務づける。
※事例1「財産の使い込みを疑われた!』
長男の嫁として義母と同居しているY子さん。最近、足腰が弱くなってきた義母に代わって、銀行での
お金の引き出しや振込みを行っている。先月は義母と相談して風呂や階段に転倒防止用の手すりをつけた。
Y子さん自身、できる限り義母の意向に沿うように一生懸命世話しているつもりである。
ところがそんなある日、離れて暮らしている夫の姉から疑いをかけるような電話があった。
「母はなんて思ってるか知らないけど、あなた母の預金を勝手に使ったりしていない?」
夫は「そんなことは気にするな」と言ってはくれるが、Y子さんにとってはあまり気持ちのいいものでは
ない。
今、夫の提案で「財産管理等の委任契約書」を作成中である。
この事例のようなケースもあるため、お世話してくれる人のためにも、財産管理等の委任契約書の作成を
お勧めします。
次回は財産管理等の委任契約の作成方法について説明します。
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